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「お嬢さん、旦那さんと話さはりましたか?」 「してしません……。面と向かって『いらん子や』言われるのが怖いさかい……」 「旦那さんは、昼間はお商売がおますさかい、いはらしませんけど、夜はずうっとお嬢さんの隣の部屋においやすのどっせ。いつでも駆けつけられるようにと」 「……」 「お乳母はんも、お嬢さんにつきっきりだす。お嬢さんがきぃついてはらへんだけで、お嬢さんは、大事に大事に思われてはるんどっせ」 その日をさかいに、りんは少しずつほっしんのお粥を食べられるようになった。りんは、仮面さんが現れると、ほっしんのお粥を食べ、仮面さんのお茶をのみ、胸につかえていた苦しい思いを少しずつ少しずつ話した。 「そんなふうに感じてはったんどすか。さぞかしおつらい思いをしゃはりましたやろな」 りんの話を聞いて、仮面さんも声を震わせた。次第にりんは、仮面さんが来てくれるのを待つようになった。仮面さんに会いたいと思うようになったのだった。 坪庭の蝋梅が香る頃になると、りんは、家のものが用意したお粥や滋養のあるおかずを食べられるようになっていた。心なしか頬も少しふっくらして、自分の力で座れるようになったのだった。
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