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「あれ?ここ、…どこ?」
(まさか、またどこかに飛ばされてしまった?それともアストラル体になって別の世界に入り込んでしまったのかしら?)
「! 猫ちゃん!?ねえ、猫ちゃん!どこ?」
さっきまで、か細く鳴いていた三毛猫を探すが影も形もなかった。
この場所には彼女以外の姿はなかったのだ。
ぐるりと周囲を見渡しても緩い勾配のなだらかな草原しか見えなかった。
視線を前方に向けると遠くに草以外の何かが見えた。
黒くて頑丈そうなテーブルに白いテーブルクロスがかかったものがひとつ、ポツンと置かれていた。
若草色の中でこの漆黒の黒は目に焼き付いた。
あたりの神々しさを飲み込んでいるブラックホールのようだったからだ。
さらによく目を凝らすとそのテーブルのそばには椅子があり誰かが座っていた。
髪の長い女性のようだった。
風に流される金髪が陽の光を浴びてさらに輝いて見えた。
凛香は吸い寄せられるように彼女のいる場所を目指して歩き始めた。
自分が重い植木鉢を持っていることすら忘れて、何かに惹きつけられるように彼女のいる場所を目指して歩みを進めた。
彼女のいるところへ行ってみたいという欲求には贖えなかった。
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