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俺が感傷に浸っていると彼女がぽつりと溢した。
「多分気づいてなかったと思うんです」
「……ん?」
「零士さんがさっき電車で無視したギャル……私なんです」
「え……、さっきのギャル擬がお前だと」
「はい……」
辿々しく紡がれたのはなんて事ない、高校デビューに成功し友人もできたが、どこか虚しさを覚えるというありきたりなものだった。
「ここに来る度思うんです。今の自分を見てあの頃のわたしはどう思うんだろうって」
平素なら「へーそうなんだ」と聞き流し、「いい事あるよ」と話を逸らせたのだが、生憎啜り泣く少女にかける言葉なんて洒落たものを俺は持ち合わせていない。いや、気の利いた言葉はいくらでも脳裏に浮かんだ。ただ、それらは静かに朽ち落ち、終始口を突くことはなかった。
居た堪れなくなり彼女から目を逸らす。疎に点いた街灯すら今はいやに眩しく感じた。
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