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上島先輩と合流し、潜水索を頼りに海面へ上昇した。
体への負担が大きいため、ゆっくりと上昇しなくてはならない。
1メートル、2メートル……
少しずつ、でも確実に泳ぎ進めた。
夕日に染まった海中がうっすらオレンジ色に染まっている。
上を真っすぐ見つめると、ほのかに光が近づいてきた。
その光を遮る小型ボートの影。
私は手足に力を込めて、その影に向かって真っすぐ泳いだ。
海の扉を勢いよく破り、海面から頭を出す。
水しぶきが飛び、大きな音を立てた。
沈みかけた夕日が私の瞳をオレンジ色に染める。
救助用のボートに乗った隊員に女の子を差し出した。
ずっしりとした重みが私の両腕にかかる。
海底で見た時よりも女の子の顔色がよくなっていた。
頬が桜貝のようにピンク色に色づいている。
体を思いっきり上へ押し上げ、ボートに乗り込んだ。
「望月、よくやった」
上島先輩が私の肩を叩いた。
「妹と……一緒に助けたんです」
「妹?」
「……はい」
レギュレーターを外し、息を切らしながら答えた。
夕陽に反射した海面がオレンジ色の光に煌めいている。
波の音に耳を澄ませながら、静かに微笑んだ。
『お姉ちゃんなら大丈夫だよ』
詩織のくれた言葉がいつまでも心の中で優しく漂っている。
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