遺品整理

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「そんなに急がなくてもいいんじゃない?」 「辛いなら、まだ気持ちの整理がつかないんだよ」 「焦らなくても、時間が解決してくれるよ」  月並みな言葉に、私は納得しようとした。私が母の物を捨てられないのは時期尚早だからで、まだ踏ん切りがつかないのだ、と。  焦ることはない。時間はたっぷりある。ゆっくりとできるところからやっていけばいい。そう思っていたけれど、そんな悠長なことを言っていられなくなった。その頃とは状況が変わってしまった。だからやるしかない。  日持ちする食品関係は、賞味期限切れや自分が食べない物、開封された物など、何も考えないようにして機械的に作業できた。それでも、母が好きだった焼き菓子が出てきた時はさすがに手が止まった。  食器棚に手を伸ばした。母一人の生活で、これほどの食器が必要だろうか、と思うほどの量だ。料理好きな母は、色とりどり、形もさまざまな器におかずを盛り付けて、食事を楽しむ人だった。  母が好んで購入したお皿や器を、一つ一つ手に取りゴミ袋に入れていった。ガチャガチャとゴミ袋の中で食器が騒ぐ。    
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