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帰省した際には、母は張り切って料理を振る舞ってくれた。兄家族と私が勢ぞろいすると、よく作ってくれたおでんが私は大好きだった。
兄家族が折りたたみテーブルを囲み、ダイニングテーブルに私と母が向かい合わせに座った。姪っ子たちの賑やかな声に、兄嫁が子供たちのお世話する声、時折兄が姪っ子たちの顔や手を拭いて、そんな様子をほほえましく二人で眺めた。
「結花はいい人おらんのん?」
幸せそうな兄家族を見ると、どうしても聞きたくなるものなんでしょうね。
お決まりのその質問に、回数を重ねるたびにウンザリしていたが、いつの間にか聞かれなくなった。
「焦らんでもええし、別に結婚だけが全てじゃないし。結花が好きなように生きていったらええんよ」
「……うん」
諦めたのかな、もう私に結婚は無理だと思われたのかな。
誰もいない静かな家の中で、擦れるゴミ袋の音と、食器同士重なる音が寂しく響く。だんだんと思い出に押し潰されそうになり、胸が苦しくなる。
潤う瞳にまばたきを数回。私は手を止めて天井を見上げた。深く息を吸い込み、ゆっくりと吐いた。
やっぱり進まない。母がここで生活していた跡は、至るところに存在している。
私はキッチンを抜け出し、母との思い出を辿りながらリビングに来た。
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