遺品整理

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 二階にある母の部屋に来た。ここはより濃く母の存在が残っている。多趣味な人だったから、大正琴やクロスステッチ、絵手紙など、母が楽しんできた形跡が至るところにある。友人も多い人だったから、何かとみんなでワイワイやっていたのだろう。人見知りな私からすれば、うらやましいほどの社交性だ。  懐かしい学習机に手が触れる。「結花がもう使わないなら私が使いたい」と母が言って、家を出る前に母の部屋へ二人で移動した。机の角のアニメのシールは、幼い私が貼ったものだ。剥がさないまま色も落ちて縁がボロボロになっている。  引き出しには何が入っているのだろうか。何の意図もなく、興味本位で引き出しを開けた。  一際目を引く真っ白い封筒があった。手に取ったその封筒には母が書いたであろう見覚えのある文字があり、私の視界を滲ませた。   『結花 結婚おめでとう』    文字を最後まで読む前に、すでに熱いものが喉を押してくる。今まで耐えていた感情が、もう我慢なんてどうでもいいと思えるほどに、頬をつたい落ちていく。封筒は少し厚みがある。糊付けされていない封を開けて傾けると、お札が出てきた。たくさんあって初見ではいくらなのかはっきりしないが、百万近くはあるのではないか。
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