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不用心だなぁ……と思いながらも、母の思いを噛みしめた。
母は最後まで私の幸せを望んでいたんだ。私が結婚すると報告したら、きっと母はこの封筒を私に渡そうとしてくれたに違いない。結婚の話になると私が不機嫌になっていたから、だんだん言わなくなっていたけど、言わないだけで本心は私に結婚してほしかったんだろう。
母の思いが、今になって心にしみていく。私の思いは、涙となって溢れていく。
ポケットの中でスマホがブーンと震えている。すぐに電話だと気付き、慌てて鼻をすすった。
『結花? 片付けは進んでいる?』
電話の向こうでいつもの孝介の声が聞こえる。温かい声が私の心に響く。
『結花? 大丈夫? 辛くなってない?』
自分で片付けると決めたんだ。でも、私にはまだ無理だったのかな。揺らぐ気持ちに自分が嫌になる。
「孝介」
その名を口にした途端に、すっかり気が緩んでしまった。その場にしゃがみ込んで、むせび泣く。
「お母さんが、私に……お祝いを、準備してくれてた」
『そっか』
「もっと早く、孝介のこと紹介してあげれば良かった……」
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