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『結花のお母さんも、結花がこの家に住むって言ってくれて、喜んでると思う』
孝介のやわらかい言葉が、ゆっくりと私の芯の部分を溶かしていく。温かくて涙も同化していく。
『それに遺品整理は物を捨てることじゃない。前に進むために整理するんだ。これから思い出と共に生きていくために、残すものを選ぶんだよ。これからの僕と結花の人生に、必要なもの、残しておきたいものを選ぶんだ』
母が過ごしたこの家に、結婚して一緒に住もうと決めたのは孝介だった。私が過ごしたこの家で、これからの人生を一緒に歩みたい、そう言ってくれた。
「そうだね」
落ち着け、私。孝介は私に寄り添ってくれた。母を亡くした時も、遺品を捨てなくちゃと思った時も、いつも私には孝介がいた。そして母がいたから、今の私がいる。母の支えがあったから、こうして孝介と新しい人生をスタートさせようとしている。
「私がいつまでもこんな気持ちでいたら、お母さんに『おめでとう』って言ってもらえないね」
私は目をこすり涙を拭った。
『ごめんね。仕事で行ってあげられなくて』
「ううん、大丈夫。孝介の声聞いたら元気出たよ」
『週末、僕もそっちに行くから』
「ありがとう。待ってる」
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