勇者なんか待てない!

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「クククッ……来たか勇者……あれ? 勇者はどこだ?」  魔王がキョロキョロする。  マーガレットのこめかみに青筋が立った。 「いないわ」 「は?」 「勇者はいないわ。来たのは私1人よ」 「は?」  魔王はポカンとすると、笑い出した。 「はーはっはっはっ! 聖女1人で我に立ち向かうつもりか!?」 「そうよ。悪い?」  マーガレットが不機嫌そうに言うと、魔王が睨みつけてくる。 「馬鹿にするな。聖女1人で我を倒せるわけがない」 「そっちこそ、馬鹿にしないでよね!」  睨み返し、マーガレットは魔王に向かって跳ぶ。身体強化魔法をかけているため、あっという間に接近した。 「小娘が!」  魔王が魔法を放つ。  だが、それは見えない壁に阻まれてしまった。 「なに!?」  魔王は驚嘆する。  魔王の攻撃は強力だ。聖女でも簡単に防げるものではない。  それでもマーガレットの結界はそれを難なく防いだ。彼女は聖女になってからも鍛錬を欠かさなかっため、歴代の聖女の誰よりも強い魔法を使えるようになっていたのだ。  それと同時にマーガレットは、自身しか使えない最強の攻撃魔法を習得した。 「来たれ、浄化の剣よ!」  マーガレットの手に透明なガラスのような剣が現れる。  聖女の結界を凝縮して、剣の形にしたのだ。  この剣には魔を払う浄化の力が宿っている。魔王には堪らないだろう。  それを躊躇いもなく、マーガレットは魔王の首に振り下ろした。 「ぐぁぁぁぁーー!!」  激しい雄叫びとともに、魔王は塵に返った。もう、微塵も気配はない。  マーガレットは剣を消すと、少し笑った。 「ふぅ、思ったよりもあっさりできたわね。でも、もう少し早く来ても良かったな」  浄化の剣は16歳で習得していた。  勇者なんか待たずにさっさと行っていれば、2年もの魔王による被害を防げたかもしれない。  そんな想いを胸に、マーガレットは魔王の城を後にした。  それからマーガレットの尽力により、勇者の選定は老若男女、身分を問わずできるようになった。  そして浄化の剣は代々の聖女に伝授される。 「勇者がいないからって、現れるまでに待っている方が無意味よ。なら、聖女が魔王を倒しに行ってもいいじゃない」  そう、浄化の剣の始祖マーガレットは笑って語ったという。
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