1.鳥使いは少年皇帝にこきつかわれる。

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「ちびっ子ではない!もう11歳だ!」 鶺鴒が噛みつくように言った。 濡れたような黒髪、黒曜石の瞳に、象牙の肌。青白い華奢な体格は同年齢の子と比べると、見劣りがする。 それを跳ね返すような、気性の強さが視線に宿る。 「もうすぐ12歳になる!そのときには真っ先に紅星を私の宮に招くからな!」 「へいへい。お誕生日会でもするんですか?お友達いなくて泣いてたらかわいそうだから行ってやろうか。暇だったらな!」 「よし!約束したからな!違えるなよ!」 この中華を統べる少年皇帝。 その重みを理解し背負う顔だ。 「紅星妃に命じる。先ほどの鳥を今一度呼び戻せ」 はいはい、と紅星はすうっと息を吸い込むと、口笛を鳴らした。 きゅーるるる!甲高い声が青空に吸い込まれると、呼応する鳴き声があった。 「じっとしてろ。お前の頭に留まらせてやる」 「まあっ!皇帝の頭は神聖な場所ですのよ!止まり木ではございません!」 「まあいい、そんなことができるのか」 「できるとも。鳥使いをなめるんじゃねえよ」 紅星の口笛に呼び寄せられた小鳥が、ふわりと鶺鴒の冠に留まって、甲高く鳴く。 「まるで太后様のかんむりのようだ。華やかで美しいよ」 紅星のことばを聞いて、鶺鴒がいきなり頭を振って鳥を追い払った。 「何をするんだ!せっかく呼び寄せた鳥なのに!」 紅星に向けてきた顔は、怒りで歪んでいる。 「太后は母を無実の罪で陥れ幽閉した」 紅星が息を飲んだ。 それは皇帝鶺鴒と下女紅星の出会いの日のことだった。
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