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「ちびっ子ではない!もう11歳だ!」
鶺鴒が噛みつくように言った。
濡れたような黒髪、黒曜石の瞳に、象牙の肌。青白い華奢な体格は同年齢の子と比べると、見劣りがする。
それを跳ね返すような、気性の強さが視線に宿る。
「もうすぐ12歳になる!そのときには真っ先に紅星を私の宮に招くからな!」
「へいへい。お誕生日会でもするんですか?お友達いなくて泣いてたらかわいそうだから行ってやろうか。暇だったらな!」
「よし!約束したからな!違えるなよ!」
この中華を統べる少年皇帝。
その重みを理解し背負う顔だ。
「紅星妃に命じる。先ほどの鳥を今一度呼び戻せ」
はいはい、と紅星はすうっと息を吸い込むと、口笛を鳴らした。
きゅーるるる!甲高い声が青空に吸い込まれると、呼応する鳴き声があった。
「じっとしてろ。お前の頭に留まらせてやる」
「まあっ!皇帝の頭は神聖な場所ですのよ!止まり木ではございません!」
「まあいい、そんなことができるのか」
「できるとも。鳥使いをなめるんじゃねえよ」
紅星の口笛に呼び寄せられた小鳥が、ふわりと鶺鴒の冠に留まって、甲高く鳴く。
「まるで太后様のかんむりのようだ。華やかで美しいよ」
紅星のことばを聞いて、鶺鴒がいきなり頭を振って鳥を追い払った。
「何をするんだ!せっかく呼び寄せた鳥なのに!」
紅星に向けてきた顔は、怒りで歪んでいる。
「太后は母を無実の罪で陥れ幽閉した」
紅星が息を飲んだ。
それは皇帝鶺鴒と下女紅星の出会いの日のことだった。
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