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1.鳥使いは少年皇帝にこきつかわれる。
中華大陸の覇者、陶玉国。
後宮は妃とその侍女が取巻き、絢爛たる日々を謳歌していた……が、さらにその下層。
下女たちのほとんどは、貧困の家を助けるために出稼ぎに来ていた。
紅星もそのひとりだった……三年の契約期間が終われば村に帰るはずだった。
それが今や、晴雪宮の主。
ため息をつきつつ、枝に留まった小鳥をいつものように口笛で呼び寄せた。
腹が蜜柑色をしていて、きゅるる……と美しい声で鳴く。警戒心が強くて捕まえたとしても篭の中ではすぐに死んでしまう。
小さな体で、紅星の故郷から、海を越えて倭国まで旅をするという。
「もう旅立ってしまったかと思ったよ、最後にあいさつしてくれたのか」
紅星のことばに応えるようにひと鳴きしたあと、庭に不意に人影が現れ小鳥は飛び立ってしまった。
「鶺鴒!来るならそっと入ってこいといつも言ってるだろう!」
紅星の頭を背後からぱしりと叩いた者がいる。
筆頭侍女にして紅星の妃教育を担う汎娘(ハンニャン)だ。
「畏れ多くも皇帝陛下にその口のききかた!やはりまだまだ躾が足りないようで」
にこやかだが全身から殺気が立つ。
「こんなちびっこい皇帝なんてさ、村の子どもとかわらないっつうの!」
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