親友

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親友

俺が都内にある家族のいる家に住めるようになったのが、小学二年生の頃。 学期の途中から転校してきたせいで友達もいなかったし、喘息で体調が優れないことも多くてほとんど学校に行けなかった俺は、二階の部屋の窓から隣の家の庭をよく眺めていた。 そこの家には俺と同じ歳くらいの男のがいて、毎日学校が終わって帰ってくると剣道の素振りの練習を始めるのだ。 外に出れない俺は、その元気な彼の姿をただぼぉっと眺めて羨ましく思っていた。 そしてある日のこと。 その子が俺の存在に気が付き、下から俺に向かって手を振ってきたのだ。 俺は急に恥ずかしくなって思いっきりカーテンを閉めた。 そして数十分が経過して、彼がいるかいないかを確かめたくてそっとカーテンを開けると、素振りの練習は終わったのか縁側で一人何かを書いているようだった。 俺は少し気になってもう少しカーテンを開けたその時、またバッチリと目が合ってしまった。 すると彼は持っていた紙を両手で持ち、慌てて頭の上にかがげたのだ。 (まどあけて) 大きな文字でそう書いてあるのが見えた。 あれは、俺に当てたメッセージ…なのか? 友達の交流なんてない俺は、何かの勘違いじゃないか?と一瞬疑いたくもなったが、でもここで無視してしまったら、一生あの子とは友達になれないかもしれない… ここに来て初めて俺に声をかけてくれた人。 俺は勇気をだしてそっと窓を開けた。
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