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「何かしたいことはあるか?てきるだけ叶えてやるから。」
「じゃあ、あなとあの家で、あの店で過ごしたいな。」
家と店は、美久と美久の旦那に譲って、俺たちはその近くのアパートで二人で暮らしていた。
家と店にそんなに思い入れがあったなんて思ってなかった。俺はあそこで死にたいと思っていたけど。だって、先に若いこいつがいなくなるなんて、思ってなかった。
俺は頭が真っ白になった。
奥さんは静かに俺の手を握った。
ハッと我に返った。
「後を追ったりしないでね。」
ニコリと笑った。何で俺が思ってたことを分かるんだ。
「1人でいたって寂しいだけだ。」
「美久もいるし、孫の新もいるでしょ?」
「そうだけど…。」
「だから、僕の分まで生きて二人を見守って。」
「それは、旦那の透がやるだろ。」
「とにかく、一緒に、死なれても嬉しくないよ。」
「…。一緒に最後までいさせてくれよ。」
「ダメだよ。約束して。」
「…。分かった。」
俺はギュッと奥さんの手を握り返した。
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