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「よく降るなあ…。」
俺は一人呟いた。雨が降っていて客が途絶え、店に俺一人。
一人でやってるカフェだから元々そんなには混まないが、結構な雨が降っている日はほとんど客が来ない。暇をいいことに外を眺めながらコーヒータイムを楽しんでいた。しばらくすると店の前に人影が見えた。客かと思いコーヒーカップを洗い場に片した。
でも、客は入って来なかった。気になり俺はドアを開けた。すると店の軒先で雨宿りしている青年を見つけた。彼は大きなトランクを二つも持ち、びしょびしょに濡れていた。
「とりあえず中に入ってタオル出すから。」
「迷惑になるのでいいです。」
「ここにいられても迷惑だから。客もちょうどいないし。」
俺は半ば無理矢理彼を店の中に押し込み、タオルを出してきてあらかた拭いてやった。それでもびしょびしょだったので、2階にある自宅に連れていき、シャワーを浴びさせて着替えを貸した。ブカブカだったから彼は袖を捲っていた。メガネを取った彼はとても可愛らしい顔をしていた。ドキッとしてしまった。一瞬。よく見ると彼は人差し指に黒いリングをはめていた。妊娠できる男性の印だ。
これが俺達の出会いだった。
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