周遊師匠

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先生の家の建て増しと改築に当たり、とうとう家の中の工事が始まりました。 先生の寝室だった部屋と書斎だった部屋が大きく一部屋になり、新たな書斎へと改築されます。 私と先生は部屋を追い出され、応接間だった部屋でしばらく執筆していたのですが、仕事にならないという事で、白井さんと相談し、先生と私はしばらくお休みを戴く事になりました。 「少し旅に出て来る」 先生がそう仰って家を出て行かれてから、もう五日が経ちます。 先生も何年も休みも無く書いておられたので、しばらく旅行も良いだろうと白井さんも首を縦に振られた様子でした。 二年程前に漱石先生のお供をされて以来の先生のご旅行になります。 希世さんが郵便を受け取り、家の中に戻って来られました。 「要さん、先生から葉書が来てますよ」 と私に葉書を手渡されました。 二枚の葉書が一緒に届いておりました。 私はその葉書を見ながら食堂へと入りました。
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