周遊師匠

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そこには蝋燭を片手に、部屋の寸法を測り、図面に数字を書き込んでいる倉持さんがいらっしゃいました。 倉持さんは私に気付き、バツの悪そうな表情で、 「すみません。もうすぐ終わりますので…」 と仰いました。 「いえいえ、しかし大変ですね…」 と私は部屋に入ります。 「良かったら灯り、持ちましょうか」 と私が手を伸ばしますと、 「いえいえ、これは私の仕事ですので…」 と倉持さんは黙々と仕事を続けておられました。 「そこには確か…」 「ええ、大きな書棚を作ります。床も重みに耐えられる様に補強を入れて…」 私は話しかけるのも良くないだろうと思い、黙って頷きました。
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