周遊師匠

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「よ、吉原ですか…」 吉原。 正式には新吉原という所で、言わずと知れた遊郭の町です。 「ええ、たまには良いじゃありませんか、二年前の大火の後、幾つか店も建て直っていると言いますし…」 明治四十四年に吉原は大火事でその殆どが焼失してしまった様で、その後、少しずつ再建されている様子でした。 「いや、その様な所はちょっと…」 私は俯いて珈琲カップを口にします。 「別に廓に行こうと言っている訳じゃないですよ、美味しいモノを食べて、お酒を飲む。そんな感じで遊びましょうよ」 白井さんは何時に無く必死に誘われます。 するとそこに希世さんが白井さんの珈琲とクッキーを持ってやって来られました。 「あら、良いじゃありませんか、行って来られては…」 希世さんは白井さんの前にカップを置きながら仰います。 「間夫は男の憂さ晴らしって言いますし…」 「流石は希世さん。わかってらっしゃる」 白井さんは熱い珈琲を口にして目を白黒させておられます。
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