周遊師匠

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間夫って…。 私は苦笑してカップを皿に置きました。 間夫とは遊女の情夫の事で、女性を買う事は憂さ晴らしになるという事なのですが、私にはそんな経験も無く、苦笑するしかありませんでした。 「じゃあ、大門だけ見に行きましょう、大門。焼けた大門が新しく建て直されたらしいですし」 必死に仰る白井さんが可笑しくて、私は笑うしかありませんでした。 ちなみに大門とは遊郭の入口にある門の事で、何処の遊郭にもあると何かで読んだ事があります。 しかし、一つ違うのは、吉原だけはこの大門を「おおもん」と呼び、他の遊郭は「だいもん」と呼ぶのです。 江戸時代に江戸城の大門と区別するためだったのかもしれませんね。 「門なんて見ても楽しくないでしょう…」 私は残った珈琲を飲み干しました。 「そんなに行きたいなら白井さん、一人で行けば良いじゃないですか」 私は手を合わせて、 「ご馳走様でした」 と言いました。
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