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「いつも建具を頼んでいる職人が怪我をしてしまった様でして、その一番弟子の彼女が今回はやらせて戴きますので」
と棟梁は湯飲みを手に取りながら微笑んでおられます。
「女性の建具師さんも珍しいですね」
希世さんはお茶菓子の載ったお盆を前に出しながら、その女性を見られました。
「実は怪我をした職人は私の父でして、娘の私も幼い頃から、父の仕事を見て来たモノですから、一人っ子なので、私が父の弟子に…」
私は頷きながら、その女性の姿をじっと見ておりました。
ふと、その女性倉持さんと目が合いました。
「まあ、彼女も父親に劣らず、いい仕事をしますので、安心してください」
大工の棟梁はそう言って豪快に笑っておられます。
私と希世さんは今一度頭を下げて、部屋を出ました。
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