プロローグ

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 『厄憑(やくつ)きリヴィ』  伯爵令嬢リヴィ・キャンベルが不名誉なふたつ名を授かったのは、彼女が7歳を迎えた年のことであった。  キャンベル家当主である父ルドリッチとともに、貴族仲間の茶会に参列していたリヴィは、茶会に招かれていた占星術師から予言を授けられることとなった。  予言を授けられる、ということに特別な意味はなかった。「せっかく茶会の席に占星術師がいるのだから、子どもたちの未来を占ってもらうのも面白かろう」と参列客の誰かが言ったためだ。  そこでリヴィを含む十数名の子どもたちが、皆が見守るなか占星術を受けることになった。 『この子は勇敢な騎士となり、国土防衛に多大なる貢献をすることだろう』 『この子は良家へと嫁ぎ、子宝に恵まれ温かな家庭を築くことだろう』  占星術師は子どもたちに次々と幸多き予言を授けた。  そしてリヴィの番がやってきた。占星術師はリヴィのルビーレッドの瞳をじっと見つめ、それから恐れおののいたように叫んだのであった。 『この子は呪われている。赤い目と髪は不吉の象徴。リヴィ・キャンベルは凶星の下に生まれ、王国に破滅をもたらすだろう』  初めのうちこそ誰もこの予言を信じなかった。茶会のよい余興であったと笑い飛ばして終わりであった。リヴィのルビーレッドの目髪は、宝石のようで美しいと貴族仲間の間では評判であった。その美しい少女の目髪が、まさか不吉の象徴であろうなどと信じる者はいなかった。
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