第11話 海老とホタテとじゃがいもグラタンと……

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 朝、審議会の時間が来た。執事服に着替えたルカと共に私も王城に入ることを許され、階段状になっている聴衆席の後ろのほうから見守る。私たちの他にも数十人の貴族たちが審議を見ており、両手を前で拘束され中央に立たされたリーデンハルク様とそれを半円で取り囲うように王城の人間が座っていて、そこにはサーガリアン様とレイノルド様の姿もあった。そして、リーデンハルク様の目の前にはアーガイル王太子殿下が座っておられて…… 「これからこの者の審議を始める!」  静けさに満ちた空間にアーガイル殿下の声が響き渡る。病に伏せる王に代わり、この国の頂点に君臨し、すべてを統べる存在。 「この者の罪状は身元詐称と貴族令嬢の誘拐である。まずは身元詐称の罪についてだが、この者の身元について証明出来る者はいるか?」  変わらぬ声音と瞳で殿下が周囲を見渡す。 「失礼ながら、私が」  リーデンハルク様から近いところに立っていたお兄様が、絵画を片手にすっと挙手をされた。その後ろにはディーガンさんの姿もある。 「良いだろう、中央での発言を認める」 「ありがとうございます」  殿下の許可を得て、お兄様は中央の証言台に移動した。そして、背筋を伸ばし、口を開く。 「デレク・ランバートと申します。今は他国で結婚し、別名を名乗っておりますが、私のもとの名はヴィンセント・リーデンハルク。この者の兄です。ここに絵画もあり、裏に名も入っております。この者は私の弟で間違いありません。瞳の異彩の所為で虐げられ存在を隠されてきたのです。リーデンハルク家の者として生きるために私の名を引き継いでおります。許されるならば、今後も私の名を弟に引き継がせていただきたい」  お兄様がすべてを話し終えると、王室第一騎士団の団長、サーガリアン様が絵画を受け取りに来た。その手を経て、絵画が殿下に渡る。
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