第6話 白身魚のオーロラソースがけと王城での舞踏会と

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「なんでしょうか?」  一体、何を言われるのだろうか、と緊張してしまう。「君はさきほどまでは楽しそうだったのに、今は楽しくなさそうだ」とか? また「私のことを嫌いになったか?」とか? 本当はその逆なのに。 「君が」  私の顔をジッと見つめて、リーデンハルク様が控えめな口調で話し始めた。 「君が初めてこの屋敷に来たとき、私は君にとても酷いことを言ってしまった。きっと、君を傷付けただろう。すまなかった。心からお詫びする」  ご自分の胸に手を当て、誠心誠意謝罪されていることが分かる。 「いえ、私は最初にお話した通り、リーデンハルク様に好きに過ごしていいとおっしゃっていただいて救われたのです。いまはリーデンハルク様のお側に居られることが……とても、嬉しいです……」  ――い、言ってしまった……!  恐らく、尻すぼみな話し方であってもリーデンハルク様は私の言葉を聞き取っただろう。 「私も君が居ると……、これが嬉しいという気持ちなのか?」  リーデンハルク様は、そう言いながら、まるで、その感情を初めて知ったかのような顔をした。嬉しい、という気持ちをご存知なかったのだろうか? ならば、可愛いものを見たときに感じているものが嬉しいという気持ちだということに気が付いていらっしゃらなかった、ということだろうか? 「嬉しい……。それに、この君への気持ちを一体、どんな言葉で言い表せばいいのか分からないが、これは――」
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