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「――無事か……?」
突然、とても小さな声が聞こえた。ゴホゴホと咳き込む声も。
「お兄様! ご無事だったのですか……!」
ガイアスさんに斬られ、亡くなってしまったと思っていたお兄様だった。木の根元に座ったまま、こちらを見ている。
「デレク……!」
信じられない、というお顔でリーデンハルク様もお兄様のほうに駆け寄っていく。
「俺が殺されたら、お前の証明が出来なくなるだろう? ずっと死んだふりをしていた」
リーデンハルク様の手を借りて、お兄様はゆっくりと立ち上がった。木にぶつけた後頭部はだいぶ痛かったらしく、手でさすっている。
「ですが、どのように?」
「ヘレナだ」
私の問いに答えながらお兄様がご自分の服の前を開き、中を探る。すると深く裂けたヘレナさんの手帳が出てきた。それを見て、お兄様が、ふっと笑う。
――ヘレナさんがお兄様を助けてくださった……。
思わず、泣きそうになる。
「すべて話は聞いていた。お前がリーデンハルク家を崩壊させたのだと思っていた、本当にすまない」
「いいや、生きていてくれて良かった」
お二人で固く握手を交わし、心を決めた表情でリーデンハルク様は「行こう」とおっしゃった。
それから、三人と一匹、やっとお屋敷に到着し、ルカとサーシャ、それとディーガンさんと合流した。
けれど、お屋敷に着いてすぐ
「大丈夫だ、明日、また生きて会おう」
何かをお話する間もなく、そうおっしゃって、リーデンハルク様はディーガンさんと共に王城に向かって出発されてしまった。暗闇に紛れて牢に戻らなければいけないからである。
私はさきほどあったことをルカとサーシャに報告し、今になって怖くなり震えて泣いてしまった。
明日の朝、すべての運命が決まる――。
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