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奴の心と秋の空
その日、私達は自宅でスプラトゥーンに興じていた。
「やった!俺の勝ちぃ〜」
「クッソぉ〜!次は負けん!」
「つーかそろそろやめる?もう23時だぞ?」
「えっもう?あ、じゃー先風呂入っていーよ」
「んー。わかった」
御子柴が消えたリビングで私はもう1プレイの決定ボタンを押した。
東京タワーデートから一週間────。
あの日の翌日、御子柴が持ち込んだスプラトゥーンに大ハマりし夜な夜な対決するのが日課となっている。エピソードトークを増やす為のデート特訓はまだ継続中で、食事だってもちろん一緒だ。毎日外食するのもいい加減飽きてきたので、今日は家で鍋を作った。
正直、がっつり一緒にいる。一人の時間とかほとんど無いし。たまには一人でぼーっとしたり漫画読んだりしたいとか思うのって私だけなんだろうか?御子柴はずっと独身寮に入っていたみたいだから、今までも同僚達とこんな風に過ごしていたのかもしれないな。
でも明日は非番。奴の居ないこの家で、一人で思いっきりダラダラ過ごすぞ〜!ひゃっほ〜!
────と思ったのに。
「リビング用のソファとテーブル買いに行くぞ」
な・・なんで奴が今日もいるんだ???
「アンタ今日・・仕事は?」
「非番。新婚だから一緒にしてくれたって」
ガッデェェェム!!誰じゃシフト組んだのぉぉぉ!要らん気を回しおってぇぇぇぇ!!
「それに婚姻届も出しに行かないといけないし。ほら、早く着替えろよ。時間もったいねぇだろ」
クソっ!このアクティブ行動派が!たまには昼過ぎまでお布団でゴロゴロしたいぃぃ〜。私の漫画タイム〜(泣)
────という訳で、私は引きずられる様にして近くの雑貨店へと連れて来られたのだ。
「これとかどう?」
御子柴の指差した一つのソファ。スッキリしたスタイリッシュなデザインで、もちろん良いとは思ったのだけど・・。
値段。20万て。共用部のだもん、もちろん折半よな。
「いいけどさぁ・・。ちょっと高すぎない?向こうのもうちょっとリーズナブルなやつでもいーんじゃない?」
「毎日座るし良いやつの方がよくないか?金ないなら俺が出すけど?」
「いや、それはなんか悪いしさ・・。今はエピソードトークを増やすって目的で一緒に過ごす時間長いけど、祝賀会終わったらそれももういいわけじゃん?そしたらリビングにいる事も少なくなるかなぁ、なんてさ。それにもしも同居解消したら、どっちのもんにするかで揉めたりするのも嫌だし、だったら安いやつでいーかなー、とか思ったりするけど・・ね・・」
私が歯切れ悪くそう言うと・・御子柴は無言で立ち上がった。
「・・あ、そ。ならそうするか」
?やけに素直だな?
「いいの?えーとじゃあ・・これとかどう?高見えっていうか、値段の割に悪くなくない?」
「いんじゃね」
「え?いーの?」
「いんじゃね。・・別になんでも」
────なんだろう。こいつが相手だと、すんなり話しが進むのが逆に気持ちが悪い・・。
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