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21時。
何とかやるべきことを済ませ、
その夜の仕事を終わらせた僕は、
彼より先に事務所で退勤処理をした。
早く帰宅して、ゆっくりお風呂に入りたい。
そんなことを思いながら制服を脱いで
いたら、彼が事務所に入って来た。
「で?岸野くんがどんな思いで僕と仕事
してるって?」
彼に鋭い視線を投げられて、
一瞬怯んだ僕だったが、
ひとつ咳払いをしてから渋々答えた。
「常に疲れてます。川瀬さんに対して」
こちらの態度で察することができないなら、
明確な言葉で示すまでだ。
僕の言葉の意味がわかったようで、
彼は小さく笑みを浮かべ、息を漏らした。
「キミ、意外と強いね」
「何故相手と協力して、時間を過ごそうと
思ってくれないんですか。川瀬さんが勝手な
ことをしているから、シフトを組む相手が
僕だけになるんじゃないんですか」
「勝手、ねえ」
「申し訳ないですが、店長に言って今後の
川瀬さんとのシフトを変えてもらいます。
もう無理です」
「それこそ、勝手じゃない?」
「何とでも言ってください」
では失礼しますと踵を返し、
立ち去ろうとした次の瞬間。
彼に腕を取られ、引き寄せられた。
「あ」
彼の胸の中に落ち、
そのまま言葉を失った僕は、
彼にこう囁かれた。
「それでも僕は、キミのことが好きだ」
突然の彼の告白に、
僕は身を固くしたまま、呆然とした。
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