9、良い先生?①

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「おーい、楓」 何とか女子の群れから抜け出してきた蒼真が楓に駆け寄る。 「今、中岡の奴が居たよな。何か言ってたか?」 「うん。驚いてた。あと、先生の指導を聞いてくれたって嬉しそうだったよ」 「別に、あいつの指導を受けてのことじゃねえけどな」 「そうなの?」 「ああ……まあ良いや。それより、お前って今日も補習あるの?」 「うん」 「うーん」 「どうしたの?」 腕を組んで難しい顔をする蒼真に、楓が首を傾げる。 すると蒼真は、声を顰めて話しだした。 「ちょっと小耳に挟んだ噂なんだけどさ」 「ん?」 「中岡って、前に勤務してた学校で生徒に手を上げたことがあるんだって」 「え? そうなの?」 「反抗的な生徒を殴ったとか」 「えぇ……そんな人には見えないけど」 「まあ、あくまで噂だからな。  でも補習ってさ、中岡と二人きりだろ?  もし何かされたらすぐ俺に言えよ。殴り返してやるから」 楓の肩にポンと手を置き、蒼真は力強く笑った。 それから、少しばかり笑みを崩す。 「でもまあ、楓に何かあったら俺より先に親父さんがすっ飛んでくるか」 「あはは……」 蒼真につられるようにして、楓も苦笑した。
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