11、トラウマを抉る者*

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11、トラウマを抉る者*

帰宅途中の道。 暗い夜道を歩きながら、楓は中岡に頭を撫でられた時のことを思い出す。 (やっぱり、違うんだなあ) 康介に触れられる時は何も思わないどころか、安心感があって嬉しい気持ちになる。 しかし、中岡に触れられた時は違和感と……申し訳ないが若干の恐怖心すらあった。 (康介さんは家族だから。家族として接してくれているから、かな) そう思った時、胸の奥が締め付けられるような痛みに襲われた。 (あ、まずい) 帰宅途中の道で、楓は自身の体が再び“発作”を起こしかけていることに気付いた。 呼吸が浅く忙しなくなる。 冬の寒さの中でありながら、冷や汗が頬を伝う。 (視界がぼやけてきた。何とかしないと……) このままでは道端で倒れてしまう。 そうなると、周辺の人はもちろん、康介にも迷惑がかかってしまう──そう思い、楓は焦った。 (どこかで休まないと……どこか、どこか……) 必死に周囲を見回すと、近い所に小さな公園があることに気付いた。 公園ならベンチの一つぐらいはあるだろう。 (あそこで少し休もう) フラフラとした足取りで楓は公園まで辿り着いた。 砂場と、いくらかの遊具が点在している。 昼間は近所の子供が遊びに来ているのだろうが、すっかり日の落ちた今は誰も居ない。 (良かった。ここなら誰にも迷惑がかからないで済む) 出入り口の近くにベンチがあったので、そこに腰掛けることにした。 目を閉じて呼吸を落ち着かせる。 油断すると気を失ってしまいそうだった。 肌を刺す冷たい空気のお陰で、何とか意識を保っていられた。 そうして、もう一度お守りの指輪を取り出そうとした時、どこからか声を掛けられた。
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