11、トラウマを抉る者*

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「よお、少年。どこか具合が悪いのか?」 「え……」 見れば、大柄の男性が立っていた。見た目の印象は30歳前後ぐらいだろうか。 あからさまにガラの悪い風貌でニヤニヤと笑っている。 嫌な予感がして、楓はキュッと身を縮こまらせた。 「家まで送ってやるから俺の車に乗りなよ」 男が指さした方……公園の入り口には白いワゴン車が停まっていた。 途端に恐怖心が湧き上がり、楓は震えながら首を横に振る。 「いいえ、大丈夫です。大丈夫ですから」 「遠慮するなって。ほら、すぐそこに車があるから」 拒否する楓の腕を引っ張って、無理やり連れて行こうとする。 圧倒的な体格差、力の差を前に為す術もないところだが、 それでも楓は男の腕を振り払おうと懸命にもがいた。 「や、やめて下さい。離して……」 「大人しくしろっ!」 「うっ……」 抵抗されて苛立った男が拳を振り上げた。 鳩尾に衝撃を喰らい、楓はその場に崩れ落ちる。 「バカなガキだぜ。  最初から言うことを聞いておけば痛い思いをしなくて済んだってのによ」 「うう……」 「へへっ、まあ良いや。たっぷり痛めつけながら可愛がってやるとするか」 口の端から血を滲ませて呻く楓を見て、男は禍々しくほくそ笑む。 そして、痛みと恐怖で動けない彼を車に運ぼうと手を伸ばした。その時──
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