15、小悪党

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15、小悪党

「おい、借りたものはちゃんと返せよ」 「や、だから今は手持ちがこれだけしかなくて……」 「だったら、他人からぶん取るなり内臓売るなりして金を作ってこいや!」 「ひいいっ」 大柄な男に胸ぐらを掴まれて、貧相な中年男性は怯えて身を縮こまらせる。 男が拳を振り上げて殴られる──次に来る衝撃を確信して、中年男性はぎゅっと目を閉じた。 が、しばらく待っても衝撃は降りてこなかった。 代わりに、男の悲鳴が耳に届いた。 不思議に思い目を開けると、険しい顔をした二人の男性によって大柄な男は取り押さえられていた。 「板呉剛、恐喝および暴行の現行犯で逮捕する」 大柄な男は後ろ手に手錠を掛けられた。 どうやら、彼を取り押さえていた二人の男は刑事だったらしい。 二人がかりで連行されていく板呉を眺めながら、貧相な中年男はへなへなとその場に崩れ落ちた。
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