15、小悪党

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「白昼堂々、路地裏で暴力行為とは呆れた奴だな」 杉並中央警察署の取調室にて、大柄な男こと板呉剛に康介が詰め寄る。 板呉剛(いたくれ ごう)【32】……半グレ組織に所属している男で、主に闇金の債務者からの取り立てを生業にしている。 強引で暴力的なやり方のせいで、何度も警察に通報されている男だった。 更に、この男の前科はそれだけに留まらない。 過去には性的暴行の罪で捕まったことがあった。 相手はいずれも未成年の男子だった。 本人の性的嗜好および、男子相手なら事件が明るみに出にくいという卑劣な考えのもとでの犯行だった。 被害に遭ったのはいずれも中性的な顔立ちの未成年男子ばかりだった。 そう、楓のような。 「別に、ちょっと胸ぐらを掴んだだけで殴ったりはしてねえよ」 「それでも立派な暴行罪になるんだよ」 「そもそも、借りた金をちゃんと返さない奴が悪いんだろうが」 「お前らが法外な利息を取ってるんだろう。そっちも取り締まってやろうか」 「勘弁してくれよ。  つっても、ウチはヤクザじゃないんで暴対法には引っ掛からねえけど」 「クズが。要らん知恵だけは付けやがって」 一切悪びれる様子のない板呉に、康介が吐き捨てるように言う。 「まあ良いや。罰金なら払うからさ、さっさと外に出してくれよ」 「待て。お前の罪は今回のことだけじゃない」 「はあ?」 「昨日、夜の公園で高校生を襲ったな。  彼を殴って無理やり車に連れ込もうとしただろう?」 「え? 何でそれを……」 「お前が過去に犯した罪はよく知っている。  昨日の少年にも同じ事をしようとしていたんだろう」 「うっ……」 「邪魔が入ってその場から逃げたらしいが……運が良かったな、お前」 「は?」 「お前が昨日、連れ去ろうとした少年は俺の息子だったんだよ」 「え? 嘘だろ。全然似てねえのに」 「黙れ。あのまま事に及んでいたら、今頃お前は生きてなかっただろうよ」 「…………」 康介の目には確かな殺意が宿っていた。 その迫力に気圧されて、さすがの板呉も押し黙る。 そんな中、突如として板呉は強烈な勢いで胸ぐらを掴まれた。 「分かったら、二度と楓に近付くなよ。次に何かしたら、殺す」 板呉の返事を待たずして、康介は彼の胸ぐらから手を離した。乱暴な手つきだった。
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