16、本当に良い先生?

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「だから、今すぐに捜査してって言ってるでしょ!」 「とにかく、落ち着いて下さい」 「落ち着いてなんか居られないわよ!   昨日、捜索願を出したのに警察は何もしてくれてないじゃない!!」 「娘さんは18歳ですし。事件性があると断定されない限りは……その……」 「あの子は真面目な良い子なのよ! 絶対に何か事件に巻き込まれたに違いないわ!」 様子から察するに、女性の娘が自宅に帰っていないようだ。 18歳……微妙な年齢だ。自発的な家出の可能性も大いにある。 よほどの事件性が無ければ警察は積極的には動かないだろう。 だが、康介にはこの母親の気持ちが痛いぐらい理解できた。 「すみません。何かありましたか?」 「あ、藤咲刑事」 「え? 刑事さん? ねえ、お願い! 娘を捜して! 昨夜から家に帰ってこないの!」 女性は康介が刑事だと知ると、必死に縋り付いた。 受付の制服警官を見ると、困り顔で首を横に振っていた。 少し迷ったが、康介は彼女の話を聞いてやることにした。 「では、総合相談室へどうぞ。詳しい話をお聞きします」 「はい。ありがとうございます」 直接対応してもらえることで落ち着きを取り戻したのか、女性は涙ぐみながら頭を下げた。 高倍を伴って、康介は女性とともに総合相談室へ向かった。
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