17、新たな事件

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17、新たな事件

津木恋月(つぎ れんげ)【18】……都内有数の進学校に通う女子高生。 生活態度は真面目で大人しい。親にも教師にも従順で、成績も悪くない。 昨夜、高校の帰りに予備校へ行ったきり自宅に帰っていない。 心配した親が問い合わせたが、予備校にも来ていないとのことだった。 深夜0時を超えても帰ってこないばかりか、連絡もつかないことから警察に捜索願を出した。 「事故か事件か、絶対に何かあったはずなんです!  真面目なあの子が家出なんかするはずが無いんです!」 恋月の母親が涙ながらに訴える。 見せてもらった恋月の顔写真は、なるほど真面目そうな外見の娘だった。 どことなく楓に似ている風貌だったので、康介はますます母親に同情してしまう。 それでも、刑事として冷静に情報を確認した。 「昨日は予備校には行ってなかったんですね」 「そういうことになりますわね。ああ、高校から予備校に行く途中で何かあったのかしら」 「可能性はあります。高校から予備校へ通うルートについてお教え願えますか?」 「はい、もちろん」 母親から聞いた話では、高校から予備校へは徒歩20分ほどの距離にあるという。 大通り沿いを歩いて辿り着くので、途中で何かあれば必ず誰かの目には入るはずだ。 (高校から予備校へ行く途中で事件か事故に巻き込まれたとは考え難いな) 別の可能性に思いを巡らせる。 それは、母親が娘に抱いている幻想を壊すものだった。 なので、康介はいったん話を切り上げることにした。 「それでは、我々はこれから捜査を進めます。どうぞ今日はお引き取り下さい」 「お願いします。どうかお願いします」 何度も頭を下げて、恋月の母親は帰っていった。
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