18、真面目な娘の裏の顔

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18、真面目な娘の裏の顔

夕方の4時過ぎ。 授業を終えて、部活の無い生徒がわらわらと学校から出ていくような時間帯だった。 通りすがる学生たちに声を掛けて、津木恋月(つぎ れんげ)について何か知らないか聞いて回る。 (警察手帳が無かったらただの不審者にしか見えないだろうな) 警察手帳を見せることで、多くの学生が協力的に対応してくれた。 お陰で、康介と高倍は津木恋月の友人と名乗る女子生徒に簡単に辿り着いた。 「ええ、恋月のことならよく知ってますよ。私達、親友ですから」 長い髪を靡かせて、その女子生徒は意味ありげに笑った。 「あの子、今日は学校に来なかったんですけど何かあったんですか?」 「実は、昨夜から自宅に帰っていないようでね」 「あー……」 女子生徒は、友人の不穏な状況を聞いても大して驚かなかった。 それどころか、「やっぱりね」と呟いていた。 何か知っているものと確信して、康介と高倍は顔を見合わせて小さく頷く。 「恋月さんは、昨日は学校には来ていたかな?」 「ええ。学校にはね」 「その後、予備校に行ってたんだね」 「それは嘘」 「嘘?」 「あの子、時々だけど予備校をサボるのよ。親には無断でね。  昨日もそうだったの。で、私と一緒にカラオケ行ってたのよね」 「ああ……」 まあ、あり得る話だ。 大学受験を間近に控えた大事な時期ではあるが、多少の息抜きは有りだろう。 親には予備校に行ってると嘯きつつ、友人とカラオケに行くぐらいは許容範囲だ。 「じゃあ、その後は? カラオケの後はどこに行ったかな?」 「さあ。途中でパパから連絡が入っちゃってね。そこで解散したのよ」 「親御さんから連絡があったのか」 「あー、そのパパじゃないの。パパ活の方」 「ああ……」 「あの子、親や先生の前では真面目な良い子を演じてるけど、  裏では予備校サボってパパ活とかしてたのよね」 少し意地悪な笑みを浮かべる女子生徒に、康介も高倍も顔を曇らせる。 18歳の女子高生によるパパ活……微妙なラインだ。 限りなく黒に近いグレー。いや、やはり黒か。 「昨日もそうだったってわけ。でも、昨日は家に帰らなかったんだ。珍しい。  親に何か言われるのが面倒だから、そういうことはしないと思ってたんだけど」 女子生徒は、恋月のことを心配しているよりは、面白がっているようだった。 情報を引き出すには好都合だと判断して、康介は前のめりに質問することにした。
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