19、偶然

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多くの人が行き交う繁華街。 その一角に佇むカラオケ店。 中から出てくる若い女性──失踪中の津木恋月(つぎれんげ)だ。 店から出てきた恋月は制服から私服に着替えていた。 キョロキョロと周囲を見回す。 知ってる人間がいないかを確認しているようだった。 大丈夫そうだと判断して、彼女は手前に停車していた車に乗り込む。 黒のセダンだった。 そして車はどこかへ向かって走り去る。 ……以上が防犯カメラに映っていた内容だった。 「あの車の主がパパ活の相手でしょうね」 「だろうな。残念ながら、ずっと車の中にいて顔は見えないが」 「津木恋月の行方を知るには、こいつの正体を掴まないと」 「車のナンバーは確認できそうだな。そこから調べよう」 「了解です」 警察署にて、康介と高倍は防犯カメラの映像を確認していた。 津木恋月の行方を知るには、この車の持ち主を捜す必要がある。 車のナンバーから持ち主を特定することは容易い。 この失踪事件は、解決に近いところまで来ていると思えた。 (あの母親に娘の実態を知らせるのは少々厄介だな) “真面目な娘”の姿しか知らない、あの母親のことを思い康介は小さくため息をついた。
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