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「さてと」
窓を閉めた中岡がゆらりと振り返る。
床に倒れていた楓を抱き上げて、再びベッドの上に横たえた。
「すまなかったね。痛かったろう?
でも、君が私の言う事を聞かないのが悪いんだよ」
先ほどとは打って変わって、怖いぐらいの猫撫で声だった。
楓の口元に滲んでいた血を手で拭い、その指をびちゃびちゃと舐め回す。
美味しそうに味わう中岡の顔は狂人のそれだった。
「君が従順な良い子だというのはよく知ってるからね。
私の言う事をちゃんと聞いてさえいれば、痛いことはしないからね」
愛おしむように両手で楓の顔を包む。
それから、胸へとその手を滑らせる。
途端に、それまで放心状態だった楓の目に正気が戻った。
「嫌だ、嫌だ! 離して……離して下さい!」
ありったけの力で抵抗した。
非力である為、中岡はものともしていなかったが、それでも楓はもがいた。
その際、勢い余ってベッドから転げ落ちた。
転げ落ちた先にあるクローゼットの扉に体をぶつけてしまう。
痛みで呻く楓だったが、次の瞬間、痛みなど吹き飛んだ。
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