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「そいつのせいだ!」
「⁉︎」
「全部そいつが悪いんだ!」
高倍に押さえつけられていた中岡が、顔だけを上げて康介と楓に向かって叫んだ。
訝しい顔で、ゆらりと康介がその方を振り返る。
「何を言ってる?」
「これまで上手くやってこれたのに……!
藤咲楓、お前のせいで俺は狂わされたんだ!
津木恋月が死んだのもお前のせいだ!
お前が存在していなければ俺は狂わずに済んだ。
彼女が死ぬこともなかった。全部全部、お前のせいだ!!」
「テメェ……」
中岡のあまりにも身勝手な言い分に、康介の目に殺意にも似た怒りが宿る。
その刹那、鈍い音とともに中岡の潰れた悲鳴が響いた。
「お前はもう黙れ」
「ぐうう……」
高倍が中岡の頭を掴み、床に叩きつけたのだった。
それを見て、康介は怒りを鎮めて再び玄関扉の方へ向き直った。
その時、扉が外から勢いよく開いた。
応援で駆けつけた刑事たちだった。
「藤咲! それに楓くん? これは一体……」
先頭で入ってきたベテラン刑事の米寺が、楓を抱えた康介を見て目を見開く。
康介は、部屋の中にいる高倍と中岡を目で示した。
「詳しいことはあいつから聞いてください。
俺は、楓を病院に連れて行きます」
「……そうか。分かった」
険しい顔で楓を抱える康介を認めて、米寺は何も言わずに頷いた。
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