31、更なる真相

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「そうそう、藤咲さんに1つ報告があったんです」 「何だ?」 「藤咲さん、今年の4月に発生した未解決の婦女暴行事件を調べてましたよね」 「ああ。女子高生の大市美海(おおいちみか)が被害に遭った事件だな」 「実は、その犯人のDNAが一致したんですよ。中岡恭志と。  逮捕者のデータベースに載せるために採取したら、まさかの結果でした」 「……そうか。じゃあ、これであの事件も解決だな」 高倍からの報告を聞いても、康介は特に表情を変えなかった。 訝しい顔で高倍が首を傾げる。 「あまり驚かないんですね」 「ああ。何となく、そんな気がしてたから」 「え? 何でですか?」 「大市美海も津木恋月も、見た目が楓に似てたから」 「ああ……」 「あいつ、中岡は楓に出会った事で自分が狂ったようなことを言っていただろ?」 「ええ、言ってましたね」 「それが4月だ。中岡は、楓の代わりにまずは大市美海を襲ったんだ。  その時は欲望のままにやったんだろう。  だが、そんなことはいつまでも続けられない。  それで、パパ活をしている女の子の中から楓に似た風貌の子を見つけて、  関係を持つようになったんだろう。それが津木恋月だったってわけだ」 「捜査から外されてるのに、よく分かりますね」 「何となく想像のつくことだからな」 嬉しくなさそうに康介は頷いた。 そういえば、中岡は過去に赴任していた学校にて、生徒への暴行で問題になったことがあるという話だった。 今にして思えば、その暴行というのも…… (いや、被害者が示談という道を選んだんだ。これ以上は詮索してはいけない) 思い直して、康介は考えることをやめた。 「じゃあ、俺は仕事に戻ります」 「ああ。わざわざ報告にきてくれてありがとう」 「いえいえ、楓くんにもよろしく言っといて下さい」 「それは断る」 「何でですか。お願いしますよー」 ケラケラと笑いながら高倍は立ち去っていった。 高倍は気さくな男だ。もし仲良くなれたら、楓にとっては兄のような存在になってくれるだろう。 (けど、俺の知らないところで楓と仲良くなられるのは悔しいから嫌だな) 謎の嫉妬心を燃やしつつ、康介は腕組みをする。 そんな中、事情聴取を終えた楓が部屋から出てきた。 「ああ、楓。事情聴取、終わったのか?」 「うん」 慌てて立ち上がり、楓の表情を確認する。 青褪めていたり、ショックを受けていたり……そういった様子は見受けられなかった。 「大丈夫だったか?」 「うん。大丈夫」 「そうか。じゃあ、帰ろう」 「うん」 頷いた楓の肩をそっと抱き寄せる。 そうして康介は、楓と連れ立って警察署を後にした。
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