41、クリスマスの記憶

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12月の街並みは煌びやかな光と装飾に溢れている。 その美しさに誰もが心躍らせる。 クリスマスという一大イベントは、常に沢山の人々の笑顔と共にあるのだ。 しかし、浮かれることを許されない人間も居る。 康介は仕事の為。 楓は母親の命日である為。 これまでずっと、クリスマスは質素に過ごしていた。 派手に飾り付けられた街並みは嫌いじゃない。 楽しそうに行き交う人々を見ると楽しい気分にもなる。 それでもやはり、暗い影は常に付き纏ってくる。 仕方のないことだ。 仕方のないことなのだ。 だが、そろそろ暗い気持ちだけでこの日を過ごさなくても良い時期に来てるのではないか。 浮かれる必要はないが、笑顔と共にこの日を過ごしても良いのではないか。 「…………」 上品なガラス張りの建物の前。 ガラスの向こうには、色とりどりの宝石が煌めいている。 ある決意を固めた康介が、小さく頷いて中に入っていった。
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