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星の輝く夜空の下、足元に残る雪を避けながら康介は帰路につく。
マンションの8階にある自宅のインターホンを鳴らすと、エプロン姿の楓が出迎えてくれた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
心温まる笑顔を浮かべる楓の左手に、白銀の指輪がキラリと光る。
愛しさが込み上げてきて、康介も微笑みを返した。
「いい匂いだな。今日の晩ご飯は何だろう」
「ビーフシチュー。康介さん、好きでしょ?」
「ああ。そいつは楽しみだ」
頷いて笑う。そして楓の腰に手を回してリビングへ赴いた。
扉の向こうには温かい食卓が待っているのだろう。
康介は幸せを噛み締める。
血の繋がらない親子の関係を超えて結ばれた二人。
康介と楓の生活は、基本的には今までとそんなには変わらない。
しかし、初めて唇を重ねた日以来、二人の間には明らかに甘い空気が流れるようになった。
指輪を交換してからは、更なる強い愛情が加わった。
外の世界には絶対に出せない秘密の関係だが、二人は確かに幸せだった。
これからもずっと、この幸せを守り続ける。
ずっと愛し続ける。
誓いを込めた指輪は、静かに美しく輝くのだった。
(終)
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