7、愛情ゆえの心配①

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「あ……」 マンションの8階にある自宅。 玄関を開けた楓の目に、康介の後ろ姿が映し出された。 どうやら今日は帰宅が早かったらしい。こんな時に限って、だ。 「楓!」 背後に気付いた康介が振り返る。 少し険しい顔をしているように見えた。 出迎えることが出来なかったことに肩を落としつつも、楓は笑顔を作って康介を見上げた。 「お帰りなさい、康介さん」 「あ、ああ。楓もお帰り」 楓の肩に手を置いて、康介は大きく息をつく。 その顔から険しさは消えていて、穏やかな表情になっていた。 「すぐに食事の準備をするから、先にお風呂に入ってもらって良い?」 「ああ、分かった。それじゃあ、頼む」 電気を点けてスタスタと中に入る。 明るい部屋の中でいつも通りに存在している楓を見て、康介は密かにほっと胸を撫で下ろしていた。
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