麒麟の鳴き声

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そろそろ深夜になる頃、オーダーメイドのスーツを身に付けている俺はフラフラと商店街のアーチをくぐった。 「長峰!お疲れ!」 絹枝の声が聞こえ、俺はゆっくりと振り返る。 “お疲れ”と俺に言った絹枝こそ疲れた顔をしている。 社会人として働き初めて半年。 それはお互いに疲れているはずで。 でも、俺の疲れは仕事とも違った。 「長峰お酒飲んだの?」 「うん、飲み会だった。」 働き初めてからはあまり会えなくなった絹枝と久しぶりに並んで歩く。 チラホラと街灯があるだけの暗い商店街の中、絹枝と歩く。 「長峰、大丈夫?仕事大変なの?」 「うん・・・。」 「元気なさすぎでしょ!! 久しぶりに歌って踊ってあげようか!? 長峰ってアイドル大好きじゃん!!」 絹枝が久しぶりに可愛い顔で俺のことを見てきた。 いつもは犬か猿の顔をしている絹枝が、久しぶりに可愛い顔で俺の隣にいる。 その顔を見て、俺は足を止めた。 「長峰?」 絹枝は不思議そうな顔で足を止めて俺と向き合った。 そして可愛い顔で首を傾げながら俺を見上げてくる絹枝に、俺は初めて自信が持てた。 今日は違うのかもしれない、と。 それはそうで、そのはずで。 だって、今の俺は昨日までの俺とは違う。 絶対に、違う。 そう思いながら、そう願いながら、覚悟を決めて絹枝に口を開いた。 「今日の飲み会で、絹枝と同じくらい美人な女の子から連絡先を渡された。 俺の中身が凄くタイプだって言ってくれた。 男として格好良くて好きだって、そう言ってくれた。」
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