シャンティス=フロイアーテ

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 サッチンも私も幼い頃は近所の男の子たちに良く泣かされていました。それは単純に親がいないからでした。  親がいる子達にしてみれば、そうでないと言う事は不自然で、それは充分にからかう理由になっていたようです。私達が泣き虫な女の子だったと言う事もあったのかもしれません。  なので私達は遊びに出かけてた先でからかわれたり、いじめられては泣いて帰るのが常でした。  サッチンは私以上に天真爛漫な上、気持ちが優しくて、幼い当時の私からしても夢見る女の子だなと思う位でした。もしかしたら男の子の中には彼女の気を引きたいだけだった子が居たのかもしれません。  ある日の事です。  いつもの様に囲まれて小突き回され、泣きべそをかく私達。その前に陣取るひときわ大きな子。彼の姿が目前から消え、宙を横切る疾風の影。  誰もが声を上げられない中、丸太の様に転がる男の子が自身に起こった事を把握する前に私達の右側に居た子が飛びました。ええ、誇張ではなく本当に飛んだんです。  もう何に驚いて良いのか分からない私達をよそに、左側に居た二人が跳ね飛びました。  事態をかろうじて把握した最後の一人がてめぇと殴り掛かるも、白金の髪が風の様にかいくぐったと思った時には男の子は地に伏していました。  あのお方はかくも颯爽と現れたのです。
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