恋の走馬灯

天国と地獄の対立が人間に平定されて五百年が過ぎた。もはや神も仏もなく善と悪の対立もない。二元論は対立構造を私的流用して利権を貪る温床だった。
正義とは何か、悪とはどのような罪なのか、誰にもわからない。
それを絶対者を僭称して恣意的に裁量すること自体が間違いなのだ。
地上の戦争はあるはずのない答えを探して侵略の爪を研ぎ澄まし日進月歩。
とうとう形而上の世界まで射程距離に納めた。

ついに人類の軍靴は神の領域に踏み込んだ。
こうして世界は地球圏治安監視団にゆだねられることになった。

これは遥かなる未來史の一ページ。
アヴァターラ・ペルソナという人物の物語。
俺の隣席には小さな写真立てが置いてある。永遠に変わる事のない少女。アヴァターラ・ペルソナ。

俺と出会ってくれてありがとう。出会いの奇跡に感謝。そして母さんの再婚相手を探すきっかけになった大恩人。

アヴァターラ・ペルソナ。いつまでもいつまでも人々の心に生きていてくれ。