一歩目

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 眠りにつく前、ベッドに横になりながらいつものようにスマホをいじってネットの海を漂っていた。  とろんとした寝ぼけ眼で、半ば夢心地。今すぐにでも寝られそうなのに、指は止められない。  ぽちぽち、ぽち、……ぽち。  だんだん次の画像に行くのが遅くなっていく。  次で最後にして、今日はもう寝よう。  そう思ってスクロールすると、ピンク色の画面が目に入った。  桜……?  ぼんやりとした意識の中で、僕は画面をじいっと見つめた。その刹那、途端に意識が覚醒して目をかっと見開いた。  桜の木に凭れかかり、淡い色をした空を無表情に見上げる男。  太陽に照らされた、肩まである白金の髪が風に攫われそう。  桜の妖精かと見紛うほど、浮世離れした姿。  予告無く現れた一番星のように輝いて見える。  その光景はあまりにも美しくて、眠気なんてどこかに消え去った。  今までだって、何千枚、何万枚と写真を見てきたのに。こんなに夢中になって、目を奪われた経験なんてない。  もっと見たい。  彼のことがもっと知りたい。  初めての感情に突き動かされて、震える指でプロフィール画面に飛んだ。
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