五歩目

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五歩目

 それから一週間の間、僕の頭の片隅には常に先輩が存在していた。いくら誤魔化そうとしたって、思いを寄せている自覚がある。  彼の顔が浮かんでくる度に会いたくなって、切なくて、呼吸がうまくできなくて苦しかった。  こんな気持ちのまま、会いたくない。  きっと顔を見たら、また好きになってしまう。  叶うはずのない不毛な片思いを続けられるほど、僕は強くない。  また隣に座られたら今度こそ心臓が止まっちゃうんじゃないか。どんな顔をして彼に会えばいいのか分からない。平然としているなんて無理だ。  こんな奴の近くなんて嫌だと思われたかも。もしも隣でも後ろでもなくて、これまで通りまた遠い席に座ったら……。そう思うと胃に冷たい傷がついた。  いろんなことをぐるぐると考えてたら、その場に張り付いたみたいにどうしても足が動かなくて、授業開始の時間になっても僕は家のドアを開けなかった。  まだあの授業は一度も休んでいないから、出席日数は余裕がある。諦めてベッドに寝転がっていれば、授業をサボった罪悪感と逃げることしかできない自分の弱さが押し寄せてくる。  自分で全く好きになれない僕のことを、一体誰が好きになってくれるというのだろうう。鬱屈した気分は晴れそうにない。
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