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「今日も桜愛の30 minutes left 始まりました。明日が来るまでの残り30分のひととき、おつきあい下さい。今日の一曲めは……」
今流行りの男性グループの曲が流れ出す。テンポの良いラブソングは歌いやすい。無意識に桜愛も頭でリズムをとり、目はpcにある沢山のメールを読む。
桜愛と違いガラスの外の数人の男達は、時計と機械を見合わせながら真剣な顔をしていた。
「それでは、リスナーさんから来たメールを紹介していきます。サトリの爽さんからです。僕の悩みを聞いて下さい。僕は妖が見えます。サトリのチカラで人の心が読めます。みんなに嫌われそうで誰にも言えません。気持ち悪いですか?」
ガラスの外の男達は驚いた表情をしたが、面白かったようで、口に手をあてて笑っていた。
ただ防音のこの部屋には聞こえない。
桜愛は真剣に顎に手を当てて考えている。
「人それぞれだから、私は気持ち悪いとかは思いません。サトリの爽さん凄い能力ですね。始めて聞きました。誰も知らない世界を知っているって私はちょっと羨ましい気がします。でも、人の心が読めるのは、キツイよね……。知らない事がいい事もあるし、サトリの爽さん、キツくないですか?大丈夫ですか?そっちの方が私は心配です……。というわけで、みんなが元気になれそうな曲かけます……」
桜愛は本心を伝えた。
このメールが嘘ならそれでもいいが、これが本当ならばSOSだと思ったから……。
ラジオ番組にくるメールは、冷やかしもあれば、本当の相談メールだってくる。桜愛は、見えない相手だからこそ、本当とか冷やかしだとか決めつけたくなかった。
ガラスの外の男達は、桜愛の言葉を聞き腕を組み頷いていた。
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