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次の日学校で詩織は、興奮した様子で爽の机の前の席に座った。
「爽!昨日の綺麗な人誰?親戚?」
爽は肘を机につき、めんどくさそうに呟く。
「父の大切な人」
「じゃあお母さんになるの?」
「知らない。俺関係ないから……」
詩織は不思議に爽の顔を覗き込む。
「爽はあの人嫌いなの?」
「そうじゃないけど……」
詩織は、爽が不満そうな顔をして、机に寝そべるのを見つめる。
「あ……お母さんは1人だけとか?」
爽は居心地が悪く寝そべったまま顔を隠した。
「当たり?まぁ確かに1人だけどさ。お父さんはあの人の事好きなんでしょ?別に爽のお母さんの変わりって言われたわけじゃないんだし、私なら分けて考えるかも……」
爽は顔をあげ詩織を睨みつけた。
「わかってるよ!だから父に好きにすればいいって言ったし」
「じゃあ何でそんな顔してるの?」
また爽は顔を机に伏せ寝そべる。力無い声が聞こえた。
「母さんは1人だけだって言った……」
詩織は、爽を見下ろし頷きながらため息をついた。
「そっか……爽も少し後悔してるんでしょ?しょうがないよ。難しい問題だよ」
爽はあれから罪悪感が芽生え心に引っかかっていた。
別に父と付き合わないで欲しいとは思っていなかった。ただ、母さんは1人なのに2人になると考えれば母さんを否定された気持ちになる。
ただ、俺の一言できっとあの2人はいい方には向かわないとわかっていた。時間が経てば経つ程、それが罪悪感に変わる。
幼馴染の詩織に指摘され、何だか少し冷静になれた。確かに大切な人と紹介されただけで、結婚するとは言われなかった。後々そうなるかもしれないが、やはり俺は父の付き合いをも否定した事になる。
家に帰ったら父と少し話しをしてみようと思った。
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