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あれから桜愛も落ち込んでいたが、仕事に穴はあけられず、気力のみで仕事をこなしていた。
今日も何とか仕事を終え、ラジオ局を出ると爽が壁にもたれて待っていた。
桜愛と目が合うと爽は会釈をし、桜愛の方に近づいてくる。
「少し話しをさせて下さい」
桜愛は頷き目の前の公園のベンチに並んで座ると、すぐに爽は桜愛に頭を下げた。
「桜愛さん。この前はすみませんでした。俺、自分の事しか考えれなくて……。俺のせいで父と別れたんでしょ?父のあんな顔見た事ないくらい落ち込んでて。父には幸せになって欲しいと思ってたのに、あんな顔させてしまった。より戻してもらえませんか?」
桜愛は爽に弱く微笑みかける。
「爽くんのせいじゃないよ。気にしないで?よりは戻らないよ。こうなる運命だったんだと思う」
爽は肩を落とし困った顔をすると、スマホが鳴る。液晶には父と表示された。
「爽、どこにいるんだ?帰ってこい!」
「今桜愛さんと一緒」
「え!?」
電話の向こうから素っ頓狂な声が漏れ聞こえた。
爽と桜愛はおもわず顔を見合わせ笑った。
電話を切ると爽はもう一度桜愛に語りかける。
「今から父が迎えに来ます。もう1度だけ話しあってもらえませんか?もう父の事嫌いですか?」
桜愛は大人びた爽を見て困った顔をした。
「嫌いじゃないけど……」
桜愛は子供の爽に心を読まれている気がして思わず下を向いた。
「桜愛さん……僕、人の心読めるんです。だから2人の気持ち実は知ってるんです。僕、桜愛さんのラジオによく相談のメールしてました。父より相談してたと思います……」
桜愛は、何だか聞いた事あるフレーズに一瞬固まり、何かを思い出したようで、爽を指差した。
「え?え?!サトリの爽さん?」
爽は返事はせずにニヤニヤと笑って桜愛を見る。桜愛は両手で口を押さえて、驚きを隠せないでいた。
暫くして陸が2人の前に現れた。爽は陸に目で合図を送る。
すると陸は桜愛の側に行き、抱きしめ耳もとで囁いた。
「桜愛……辛い想いさせて悪かった……」
桜愛は陸の優しさを感じ涙をこらえ身体が震える。
爽は2人をチラッと見て微笑み、車に向かって歩き出す。
「父さん俺車で待ってるから頑張って……」
父と桜愛に背を向け歩きながら手をひらひらする。自然と笑みがこぼれていた。
陸は桜愛と見つめ合い、抱きしめる手を強める。
桜愛に自分の想いをのせてキスをした……。
そして2人は見つめ合い微笑んだ。
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