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陸も桜愛も高校時代を思い出す。
お互いの好意を知りながらも、なかなか友達を手放せず、恋仲になれずに卒業していた。
「陸は今何しているの?」
陸は少し言いにくそうに、私を手招きし私の耳元でみんなに聞こえないように囁く。
「警察」
桜愛は、陸の息が耳に当たり顔を赤くした。
陸にバレないように、一瞬飛びそうになった意識を戻し、冷静を演じる。
「凄いね。確かになんか紳士的な雰囲気ある」
桜愛は胸の高鳴りがバレないように微笑む。
一度意識してしまうともう止まらない。
そして桜愛は、初めから気になっていた事を聞いた。
「結婚は?」
「俺バツイチだよ」
桜愛はなぜだか心が弾んだ。
「そうなの?あたしは……」
「聞こえたさっき……見合いがどうって……」
「そっか。この歳まで1人だとしょうがないんだけどね……」
その後はもうあんまり覚えてなくて、たわいもない話しなのに話せば話すほど陸との時間が楽しくて、昔のように笑って話していた。
二次会はこのまま2人で飲み直す事にし、最上階のバーに移動した。
今日は緊張していたのもあるし、きっと飲み過ぎたせいかもしれないが、陸と久しぶりに会えて、トキメキを思い出した。
桜愛は両肘をつき陸を見つめると、昔なかなか言えなかった言葉が嘘のように簡単に口から溢れる。
「陸の事昔好きだった……」
陸は、少しだけ首を傾け肘をつき桜愛を覗きこむ。
桜愛は陸と見つめ合う。
陸は昔の面影も見え隠れするが、今はもう1人の男で、昔のようにこちらが気持ちを押せば引いてくるような事はない。
陸の目は蠱惑的な眼差しで桜愛を見る。
「俺も桜愛の事好きだった……」
陸は桜愛の胸元にある長い髪の先を触る。
「今は……?」
桜愛が意地悪な質問をした。
陸は微笑み桜愛の髪を触っていた手を離し、今度は桜愛の指を触る。
「嫌いになれない……」
「ずるいな……」
桜愛は、上目遣いで陸を見て妖艶に微笑む。
桜愛の黒いワンピースから見える胸元の白い肌が一段とピンク色に染まった。
陸は鼻で笑い、撫でていた指を止めて、桜愛の指を握る。
2人ともあの頃とは違いもう大人で、これからどうなるかは理解していた。
陸がそのままこのホテルに部屋をとる。
部屋のドアが閉まると同時に桜愛を強く抱きしめた。キスはどんどん深くなり、お互いを求めあう。
昔の時間を取り戻すように……。
お酒と大人の力はあの頃足りなかったモノとなり、2人の背中を押した。
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